PAGE97 REPORT（97年2月9日・記）

●ＤＴＰ関連を中心とし今年で10回目となるページショウ。今回はPAGE97と銘打ち1997年2月5日（水）から7日（金）までの3日間、東京の池袋サンシャインシティコンベンションセンターTOKYOで開催された。今年のテーマは「インタラクティブ・コミニュケーション」。来場者と出展者間の双方向な伝達、ここにartmania流にPAGE97をレポートする。（出展社の50音順に掲載・尚、本文と画像の人物は無関係です）
　

ご感想はこちらまで
artmania@air.linkclub.or.jp

盛況も利用者に冷たいアドビシステムズ社

●Adobe PhotoShop、Adobe PageMaker、Adobe Illustrator、さらにはAdobe AcrobatとＤＴＰ界御用達のラインナップを誇るアドビシステムズ社。デモンストレーションタイムには人垣が十重二十重にブースを囲む。もはや同社が開発したPostScriptの利用なしでは出版業界では生き残れないことの証か。
●ところで筆者はAdobe SiteMill 1.0Jによってこのartmaniaﾊホームページを作成している。96年10月にSiteMillのユーザ登録のハガキを投函したものの、一向に登録完了といった通知がアドビシステムズ社から返送されない。ソフトウエアのユーザ登録を行えば登録完了の通知が届くのは当然のこと。4カ月を経ても通知がないのはなにかトラブルでもあったのでは、と危惧をしていた。
●さてAdobe SiteMill 1.0Jの最大の不満はテキストの回り込みができないこと。
ところで日経MAC97年1月号によれば（同誌135ページに掲載）97年1月発売の、Adobe PageMill 2.0J（SiteMillではなくPageMill）は、テキストの回り込みが可能である。幸いアドビシステムズ社のブースにはユーザからの質問や相談を受け付けるコーナーがあった。筆者は質問をすることにした。
●「すみません、去年の10月にSiteMillのユーザ登録のハガキを送ったのですが、まだ登録完了の連絡がこないのですが？」
---当社は登録完了の通知を送るシステムを取ってはおりません
「？？そうなんですか？　わかりました？？　ところでPageMill 2.0Jではテキストの回り込みが可能ということなのですが、SiteMill 2.0Jでもテキストの回り込みは可能になる予定なのでしょうか？」
---Adobe PageMill 2.0Jでもテキストの回り込みは可能ではありません。なぜならHTML側でテキストの回り込みを解放しておりませんから。
「？？そうなんですか？わかりました」といって筆者はAdobe PageMill 2.0Jのパンフレットを手にアドビシステムズ社のブースを後にした。
パンフレットに書かれた主な機能に「・テキストの右揃え・左揃え、グラフィックスへの回り込み」とあった。

上記に対する苦情はこちらまで
artmania@air.linkclub.or.jp

当たり前がわかりにくいApple

●Apple Publishing Pavilionなるブースを展開しサードパーティと合同で展示ホールAの一角を独占した観のあるアップルブース。同ブースで出力された印刷物を受け付けで提示すればＴシャツが当たる抽選が行なえるいうことで、引きをきらない。しかし、印刷物そのものに魅力が乏しい。この程度の内容ならばなにもMacにこだわらなくてもと思わせてしまう。
●その印刷物で謳っていることといえば・・・「Masters of MediaとはAppleが提唱する新しいメディアに対する概念です。縦横無尽にメディアを駆使し、最も効果的にメッセージを伝える。さらにそのメッセージによって受手の関心を完璧に捕らえる。すなわち「メディアのマスター」となることが、Masters of Mediaの基本構想です。（後略）
●DTPがマックの最後の牙城とさえ言われる今、このような当たり前のようでわかりにくい概念よりも、具体的にQuickDrawGXの現状を語ることこそが必要なのではないだろうか。
●ところでPowerBook1400の展示がなされているコーナーがあった。そのコーナーの担当者にPowerBook1400の供給情況を尋ねると、
---私はわからない。なぜならわたしはそのPowerBook1400に対応できるMOドライブを製造しているヤノのものです---とのこと。
展示会でのお馴染みのできごとだが、このPAGE97のテーマは「インタラクティブ・コミニュケーション」。AppleのPowerBookの担当者を呼びに行くといった手段ぐらい講じてもよかったのではないだろうか。

上記に対する苦情はこちらまで
artmania@air.linkclub.or.jp

連帯を求めず孤立も恐れず、写研

●写研ブースの受け付けには「カタログの数に限りがありますのでメーカーの方はご遠慮ください」なる立て札がある。また、同社からの招待状を受け取った者でない限り書体見本もここでは入手できない。
●デモでは書体の優位を力説するも人影はまばら。写研書体の使用は同社のハードウエア上に限る、といった制限をもうけ、しかもその書体の見本帳も配布せず、ハードウエアのカタログ配布にも条件をつける。　ショウ以外にユーザーとのコミュニケーションの場をもち得ない写研は、これから先どこまで孤立するのだろう。

上記に対する苦情はこちらまで
artmania@air.linkclub.or.jp

ちょっと高圧、日本シリコングラフィックス・クレイ社

●ＣＧ界で常に市場をリードするシリコングラフィックス。デモを見る前に、社名が気になる。日本シリコングラフィックス・クレイ社とある。ブースで出展者のステッカーを胸にする担当員とおぼしき人物に「このクレイとはなんですか？」と尋ねると、
---私はわかりません。　との回答。
さらにもうひとりに尋ねると
---クレイ社とは、私どもの子会社です。　と、むっとした表情で返答された。
クレイ社についての知識を持ち合わせていない筆者は、どうやら日本シリコングラフィックス・クレイ社から拒否をされたようだ。
ということで、同ブースを早々に退散した。それにしても最初に筆者の質問に「わかりません」と回答した人物の正体は一体なんだったのだろう。

上記に対する苦情はこちらまで
artmania@air.linkclub.or.jp

フォント関連で一番元気フォントワークスジャパン

●ページショウの初頭における書体のブースといえば「写研」「モリサワ」「リョービ」といった写植書体関連が主で、次に和文タイプ。当時のコンピュータ関連は「コンピューター文字、あるいはワープロ文字」といった言葉でくくられる「ドットフォント」が主流で写植書体にはとうてい太刀打ちできなかった。しかし、今やポストスクリプト日本語フォントは印刷業界の奔流とまでなった。
●フォントワークスジャパンの販売する日本語フォントは97年4月には92書体を擁することになる。同社がフォント市場をリードしている背景には同社のフォントが、ある写植書体と類似しているからといった讒言をとられぬよう、ユーザとの「インタラクティブ・コミニュケーション」の強化をのぞむところだ。

上記に対する苦情はこちらまで
artmania@air.linkclub.or.jp

Windows95に対応したモリサワ

●筆者はモリサワがWindows95に対応した編集機の制作販売を行っていることを知らなかった。「モリサワ=PostScript=マック」といった図式が筆者のなかに存在していたのだ。しかしWintel連合がDTP界にも波及しはじめた現在、モリサワのフォントが業界の標準となる可能性は否定できない。しかし、出版業界では写植文字が標準の時代から、モリサワのハードで写研のソフトが使用できればいいのにと言われてきた願望がこれから先もあり続けることも否定できない。
●数十ページにも及ぶフォント見本帳の配布を行っていたモリサワが、写研の築いたナールやゴナといった書体とは一線を画するフォントの制作を進めることは大いに評価できる。

上記に対する苦情はこちらまで
artmania@air.linkclub.or.jp

おわりに・・・

●今回、昨年より7社多い103社の出展をみたPAGE97。会場が池袋ということもあり、東京に拠点を持つ者にとっては、幕張よりも気軽にいける。ただし階上、階下、別棟と4会場の分かれての展示は移動に難。このブースでのデモは30分後に始まるからそれまで別のブースを見て回ろう。などと思いつつ別の会場まで移動してしまい、階段を渡ってまで戻る気にはならずデモも見逃すことも多々。
●しかし、見逃したからといってそれほどの後悔はない。大体はわかっているからだ。
そして、わかっていないこともさほど重要ではない。パンフレットや専門誌に記載されているからだ。それならば展示会にまで出向く必要もないではないかと、問われるかもしれない。
●だが、行きたいのだ。なぜならブースを巡って担当者と「インタラクティブ・コミニュケーション」を行えるからだ。それによって出展社がみえてくるからだ。ブースを訪れた印象で出展社に持っていたイメージががらりと変わることがある。これがあるからこそ、展示会は楽しい。